こんにちは。
今日は掲題の書籍の感想を書いていきたいと思います。
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著者は中国語教育界の重鎮・相原茂先生で、
本書は1999年に発行されています。
読むと時代を感じる箇所も散見されますが(そこも含めてオモシロイ)、
本質的な部分での価値は変わっておりません。
むしろ今読んでも全く古さを感じさせません。
本書では中国語学習の勘所が多く書かれているのですが
今回は以下3点に絞って記載したいと思います。
1.中国語の音
2.さまよえる中級人へ
3.お金と時間
〇中国語の音
相原先生は、「音を聞いてわかるか」と読者に問いかけます。
しかし、ことばというのは音です。いま、私がいくつか中国語の簡単な単語を発音しましたが(yùn dòng,jiào yù)、とっさにピンとこなかった方、その方々は、失礼ですが、音としての中国語はまだしっくりと細胞の中にまでは入っていないということです。(中略)字を見ればわかるといいましたが、これは日本語として見ているのです。決して中国語として頭に入っているのではありません。
※ちなみに上の単語はそれぞれ运动,教育です。
特に後半のご指摘は大事ですね。
日本語として見ている限り中国語は分からないというのは真理だと思います。
私も実はここ数日であらゆる教材を使用して大量の音読をこなしているのですが
中国語を中国語として捉えるということが出来つつあるのを感じます。
リスニング力もそれに従って急上昇してきたように思います。
〇さまよえる中級人へ
「上級への道」と題した章にて相原先生は
中級でクリアすべきいくつかの事柄を挙げております。
その中のひとつをご紹介致します。
身につけるべきは、文法ルールではなく、「語彙力」なのです。
こう言いますと、単語をたくさん覚えなければならないのかと思われるかも知れませんが、そうではありません。
単語を暗記することではなく、単語の内部構造、つまり語の組み立てを理解する力を身につけてほしいのです。
例えば、
毕业(業を畢わる)ならば「動詞-目的語」
年轻(年が軽い)ならば「主語-述語」
提高(提げて高くする)ならば「動詞-補語」
といった具合です。
①熟語を構成している個々の漢字の意義がわかる
②熟語を構成している個々の漢字の意義間の関係=構造がわかる
この二つの能力を鍛えることにより、未知の単語に出会っても慌てなくなります。
辞書を引く前に大体の見当をつけることができるようになります。
逆に言えば、この能力がないと、常に大きな辞書、語彙数の多い辞書がないと不安だということになります。
英語でも語源からある程度の意味が推測出来ることがありますが
それと同じことですね。
私もこれを読んでからは熟語の構造を考えるようになりました。
それから、相原先生は中級重視の試験であるTECC(中国語コミュニケーション能力検定)を中級学習者にとってのひとつの学習目標として提示されております。
※例によってTECCは相原先生の深く関与されている試験であることはご愛敬(笑)
〇お金と時間
「人生を決めるもの」というタイトルの節の冒頭を引用します。
谷沢永一という、私の好きな評論家、読書人がいますが、大切なことには思い切って「お金をかけなさい」と言っています。自分の人生を左右するような技術の習得にはお金を惜しむなと説いています。
この様にして、一番肝心なことにお金と時間を惜しむ姿勢を戒めております。
そしてこれはもうひとつ大きな示唆を含んでいると私は考えます。
これは私見ですが、語学においては最短距離を最速で通
ることが必ずしも最良のルートではない、という仮説を持っています。
回り道をしながらゆっくり散歩するように学んだときの方が
多くの気づきを得られやすいのではないかと。
やはり人間は無駄金、無駄な時間というものを惜しむものだと思いますが
その一見無駄と思えるものが後々目に見えない価値を持ってくるということは
私もこの頃実感するようになりました。
語学でもそれは同じであると考えています。
相原先生はこうも書かれています。
ゆっくりと一人で来て、中国の本を手にとる。
すると、そこには中国独特のにおいがあります。
本だって、紙から、印刷のぐあい、装幀、やはり日本のとはつくりが違う。
それを手にして、ああいいな、そう思う人。
中国のグッズに触れて、ああいいな、そう思う人。
そういう人が本格的に中国語を学ぶ人になります。
本書については以上になります。
今回のものがとても面白かったので
他の中国語関連のエッセイにも時間を見つけて手を伸ばしてみたいと思っています。
こういったものは即効性はそれほどですが、
時間を経るにつれじわりじわりと効いてくる栄養のようなものだと思っています。
何を頼りにして良いか分からなくなりがちな中国語学習ですが、
大きく視野が開けてくる感覚があります。
みなさんにもご一読をオススメします。
以上です。それではまた。